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自己認識は当てになるのか - 紹介型マッチングアプリknewのデータからわかったこと -

 リブセンスでデータサイエンティストをしている北原です。今回もknewのデータ分析の紹介です。最後のほうで簡単にknewの機能紹介もします。

 好みのタイプではないはずなのになぜか好きとか、自分と合わないタイプの人だと思っていたけど話してみたら気が合うとかってないでしょうか。自分が思っていることって、どこまで正しいんでしょうね。今回のデータ分析では、そのあたりに焦点を当てています。もう少し具体的には、事前に登録してもらった好みのタイプの人を好みであると判断しているのか、自分が思っているタイプ通りに相手は認識してくれているのかを調べています。

knew.jp

我々は自分のことがわかっているのか

 knewが目指しているものの一つに「過度に条件や希望に依存しないマッチング」があります。従来のマッチングアプリだと、プロフィール写真や、住んでいる場所、年齢、学歴、年収などを基準に相手に「いいね」を送ったり送り返したりします。そのため、条件に合わない人とはマッチングされません。一方でknewでは、条件に合わなくても自分に合う相手がいることも考慮し、希望条件を満たしていなくても合いそうな相手は紹介される仕組みになっています。

 検索条件や質問回答の希望通りにすることが、本当にユーザーにとってよいのでしょうか。好みなど自分のことを的確に把握できていれば、適切な条件や希望に基づいて相手選びをするのが効率的でしょう。しかし、そこまで正確に認識できていないのであれば、必ずしも希望を満たしていなくても問題ないでしょう。そもそも、ユーザーの自己認識はどの程度正確なのでしょうか。

 ユーザーの自己認識が正確であれば、希望通りの相手を紹介すれば紹介精度を簡単に向上させられますよね。そこで「かわいいタイプか、かっこいい・美人タイプか」については、ビデオチャット後に相手について評価してもらうだけでなく、会員登録時に自分はどちらのタイプに近いか、どちらのタイプが好みかを入力してもらっています。別途紹介予定ではありますが、マッチングを成功させるためには容姿の影響が大きく、容姿については好みの影響が大きく、好みにはこの「かわいいタイプか、かっこいい・美人タイプか」が大きく影響しているらしいことがわかっています。そのため、会員登録時の情報を信用できるのであれば、その希望通りの相手を紹介することで好みを相手を紹介できるというわけです。

 今回調べたのは以下の2点です。いずれも「かわいいタイプか、かっこいい・美人タイプか」のどちらに近いかについて入力してもらったデータを使っています。

  • 自分が好きだと思っていたタイプを好みと判定しているか
    • 会員登録時に入力したどちらのタイプが好みかと、ビデオチャット後の相手がどちらのタイプに近いかと容姿の好みの関係
  • 自分が思った通りに異性から見られているか
    • 会員登録時に入力した自分がどちらのタイプに近いかと、ビデオチャット後の相手からの評価の違い

紹介に利用するには、いずれも正確である必要があります。

自分が好きだと思っていたタイプが本当に好みなのか

 まず、自分が好きだと思っていたタイプを好みと判定しているかについて見てみましょう。

 男女別に、会員登録時に入力したどちらのタイプが好みかと、ビデオチャット後の相手がどちらのタイプに近いかごとに、容姿の好みの平均を計算してグラフにします。会員登録時のどちらのタイプが好みかは5つの選択肢で入力してもらっています。ビデオチャット後の相手がどちらのタイプに近いかは、1から7までの7段階の数値で入力してもらっています。1がかわいい、7がかっこいい・美人、4が中間です。容姿の好みも7段階の数値で、好みであるほど値が大きくなります。

 自己認識が正しければ、会員登録時に入力した好みのタイプとビデオチャット時の好みのタイプが近いほど、容姿の好みの評価が高い傾向が見られるはずです。例えば、会員登録時に「かわいい」タイプが好きと回答した人であれば、ビデオチャット時の評価が中間の4点より左の「かわいい」寄りに3、2、1と進むほど容姿の好みの評価が高くなるはずです。「かわいい」タイプが好きと回答した人が「かわいい」「かっこいい・美人」の中間の人と、「かっこいい・美人」の人のどちらを好みとするかは不明ですが、少なくとも「かわいい」寄りの人より好みは低くなることが期待されます。つまり、グラフ形状が、「かっこいい・美人」と「どちらかというとかっこいい・美人」を好む人では右肩上がり、「かわいい」「どちらかというとかわいい」を好む人では右肩下がり、「どちらとも言えない」の人では山型もしくはほぼフラットになってくれると、紹介に利用しやすいです。

 結果は以下のグラフの通りです。

自分の好み別、相手に対する容姿タイプ評価と容姿の好み

 まず、女性から見てみましょう。自己認識に関わらず「かっこいい」ほど容姿の好みが高くなっています。自己認識に関わらず「かっこいい」男性を紹介するのがよいということです。「かわいい」タイプが好みと考えている女性では、「かわいい」が高くなるほど容姿の好みが高くなっているので、「かわいい」男性を紹介するのは有効なようです。しかし、「かわいい」タイプが好みという女性でも「かっこいい」人に対する容姿の好みのほうが高くなっていて、自己認識は当てにならないようです。「かっこいい」タイプが好みと考えている女性については、「かっこいい」ほど好みで、「かわいい」ほど好みでなくなるので、本人の希望通り「かっこいい」男性を紹介し「かわいい」男性を紹介しないようにするのが有効です。

 次に、男性について見てみましょう。男性では、自己認識に関わらず「かわいい」あるいは「美人」が強くなるほど容姿の好みが高くなっています。自己認識に関わらず「かわいい」あるいは「美人」の度合いが高い女性を紹介するのがよいということです。ただし、「美人」を好む人は「かわいい」が強くなっても容姿の好みはあまり高くなっていないので、「美人」を好む人の自己認識は比較的信用できそうです。

 本節の結果をまとめると、「かっこいい・美人」を好む人については、希望通りに紹介してもよさそうですが、それ以外の人の好みの自己認識についてはあまり当てにならないようです。自分で考えているほど、自分の好みを正確には認識できていないのかもしれません。また、「かわいい」にしても「かっこいい・美人」にしても容姿が優れているときに使われやすいことも影響している可能性があります。いずれにしても、簡単な質問回答の希望通りに紹介するのが必ずしもよいとは限らないということです。

自分が思った通りに異性から見られているのか

 次に、自分が思った通りに異性から見られているのかについて見てみましょう。データの仕様は前節で使ったものと同じです。ただし、ビデオチャットを10回以上行った人のみを対象にし、ユーザーごとにビデオチャット後に受けた評価を平均したものを使います。ビデオチャットの回数が少なすぎると評価が定まらないですし、多すぎると該当ユーザー数が少なくなりすぎるので、バランスをとってビデオチャット10回以上のユーザーを対象にしています。

 男女別に、会員登録時に入力した自分はどちらのタイプに近いのかごとに、ビデオチャット後に相手から受けた評価平均をプロットします。自己認識が正しければ、会員登録時に入力した自分のタイプが「かわいい」に近いほど相手からの評価も「かわいい」が多くなります。逆も同様です。

 結果は以下のグラフのとおりです。ボックスプロットとバイオリンプロットを重ねて表示しています。こういうグラフを見慣れていない方のために簡単に説明すると、ボックス内の太い線が中央値、ボックスが四分位を表していて、半分のデータがボックスの範囲に収まっています。ボックスと大きく離れたところにある点は外れ値です。バイオリンプロットは分布を対象に表示したもので、分布形状を詳細に確認するのに使います。

自己認識と相手からの評価

 まず、女性について見てみましょう。全体的に自己認識が「かわいい」から「かっこいい・美人」になるにつれて相手からの評価も「かわいい」から「かっこいい・美人」が多くなっていることがわかります。女性の自己認識は男性からの評価と一致しやすいようです。しかし細かく見ていくと「かわいい」と「どちらかというとかわいい」、「どちらとも言えない」の差は比較的小さく、「かっこいい・美人」と「どちらかというとかっこいい・美人」、「どちらとも言えない」の差は比較的大きくなっていることにも気づきます。つまり、自己認識が「かっこいい・美人」寄りの女性は男性からも同様の評価を受けているものの、「かわいい」寄りの女性はそれほど男性から「かわいい」とは思われていないようです。

 次に、男性について見てみましょう。男性の場合、自己認識が「どちらとも言えない」から「かっこいい・美人」までは女性からの「かっこいい・美人」の度合いが高まるものの、自己認識が「かわいい」の男性に対する女性からの評価は「どちらとも言えない」と同程度にとどまっていることがわかります。さらに分布を確認してみると、自己認識が「かっこいい・美人」や「どちらかというとかっこいい・美人」の人も、一部の男性が「かっこいい・美人」と評価されて平均値や中央値を押し上げていて、全体としてみると平均的な4に近い人が多いことがわかります。つまり、一部の「かっこいい」男性を除くと、男性は自分が思っているほど「かわいい」とも「かっこいい」とも思われていないようです。

 明確に「かっこいい・美人」あるいは「かわいい」と自己認識している人が、相手からも同じ評価を受けている割合を見てみましょう。相手からの評価がいくつ以上あるいは以下であったら「かっこいい・美人」「かわいい」としてよいかの明確な基準はありません。ここでは、容姿の好みの標準偏差が0.5程度であることから、評価が4.5以上であったら「かっこいい・美人」、3.5以下であったら「かわいい」と評価されているものとして集計します。男女別に自己認識と相手からの評価が一致した人の割合を示すと以下の表のようになります。

性別 かっこいい・美人 かわいい
女性 0.52 0.27
男性 0.50 0.14

自他共に認める「かっこいい・美人」は半数程度で、他の自己認識の人と比較すると信用できます。しかし自他共に認める「かわいい」人は女性でも1/4程度なので、それほど信用はできないようです。

 まとめると、「かっこいい・美人」の人については、「かっこいい・美人」として紹介してもよさそうですが、それ以外の人の自己認識についてはあまり当てにならないようです。男性と比較して女性の自分に対する自己認識は男性からの評価と一致しています。女性は「かわいい」「美人」と言われる機会があっても、男性はそのようなことを言われる機会があまりないことが影響しているのではと思います。

 自分の好みについては、注意深く自分の行動や好みを振り返れば気づくことができそうです。しかし、異性からどう見られているかについては、自分で気づくのは難しいです。同性の友人から評判がよくても異性からのウケは良くないということがありますよね。ではどうしたらよいでしょうか。

knew:感想レポート

 「異性からどう見られているのかわからない」そんなあなたに朗報です。knewには、相手からの評価を閲覧する機能があります。実施したビデオチャットの回数や会員種別の条件を満たせば、この機能を利用することができます。

 以下は感想レポートのサンプルです。自分が異性からどのように見られているかを知ることができます。恋活・婚活がうまくいかない人は、まずは自分が異性からどう見られているかを知るところから始めてはいかがでしょうか。

knewの感想レポート

まとめ

 今回は、「かわいいタイプか、かっこいい・美人タイプか」という質問に対して、会員登録時に入力した内容とビデオチャット後の評価を照らし合わせて、自己認識がどれだけ当てになるかを調べました。結果をまとめると以下の通りです。

  • 「かっこいい・美人」タイプの人が好みの人、自分が「かっこいい・美人」だと思っている人の自己認識は比較的当てにできる
  • 「かっこいい・美人」タイプ以外の人は自己認識が当てにならない

「かっこいい・美人」以外だと会員登録時に入力した内容はあまり当てにできないので、ビデオチャット後の評価を参考にして紹介精度を向上させるのがよさそうです。

 自己認識が正確にできていないことは自分では気づきにくいですよね。それを気づかせてくれるのがknewの感想レポート機能です。まずは、異性からどのように見られているのかを正確に把握することが大事です。

 しかし、それだけでは現状認識ができるだけなので不十分です。どう思われると相手からの評価が高まるかを知って改善していくことが必要です。次回のknewデータ分析記事ではそのあたりを調べた結果を紹介します。