リブセンスでデータサイエンティストをしている北原です。先日開催された第25回日本感性工学会大会で、紹介型マッチングアプリknewに関する発表をしたので、内容の一部を2回に分けて紹介します。なお、記事の一部で簡単にknewの機能紹介をします。
今回と次回の分析で知りたいことは、ズバリ「どうすればknewでモテるのか」です。今回は良い点と改善点に着目し、相手からの評価を大幅に上げやすい特徴や逆に下げやすい特徴を調べています。
knewを使ってモテになろう
ユーザーの魅力を高める
マッチングを増やすためには、個人の好みに合った相手を紹介するだけでは不十分で、ユーザーの魅力を高めることも必要です。紹介精度を高めただけだとモテ男女のマッチングはうまくいきますが、そうでない人たちは厳しい戦いになります。紹介精度は同じでも、魅力が高まって相手から連絡先交換OKされる人が増えればマッチング総数も増えるわけです。
効率的にモテ力を高めたい
もちろん「ありのままの私を見てほしい」というユーザーニーズがあることは把握しています。しかし、少し強化・改善するだけでマッチングされやすくなるなら、やったほうがいいですよね。そこで、満足度に強く影響しそうな特徴を知ってもらい、それについて強化・改善してもらうことで効率的にモテ力を高めてもらおうというのが今回の分析の目的です。
モテ・非モテ要素の定量的把握
「どういう人がモテるかなんて知っているよ」という人も多いかもしれません。でも、ビデオチャットという特殊な環境ですし、影響の大きさまで定量的に把握している人は少ないですよね。それに、男女の違いが大きい部分もあります。意外と、男性は女性のことがわかっていないし、女性も男性のことがわかっていなかったりします。例えば、男性目線ではモテると思ってやったことが女性からは不評なことってありますよね。だから、男女差について定量的な違いを知っておくことは大事です。
異性からどう見られているか
さらにいうと、自分の魅力を高めるのにモテ要素や男女差の知識があるだけでは不十分で、実際に異性からどう評価されるかを知る必要があります。自分ではモテるように振る舞っていたつもりなのに、相手からはそう思われていない可能性がありますからね。自己認識が当てにならないことについては、以前記事にしましたのでご参照ください。
knewの感想レポートでモテに近づけ!
従来のマッチングアプリにはないknewの優れた特徴の一つにフィードバック閲覧機能があります。以前の記事でも少し紹介しましたが、これは感想レポートと呼ばれていて、相手からの評価のサマリーを閲覧することができます。どの相手からの評価なのかまではわからないようにしてあるのですが、自分のどこが高く評価されてどこを改善する必要があるかを知ることができます。そのため、異性からの評価が上昇傾向にあるかなどを確認することで、改善がうまくいったかがわかるわけです。いきなりモテになることは少ないだろうし努力も必要になるかもしれませんが、このような機能を利用すればモテに近づくことはできそうです。
相手の良い点・改善点データ
UI
本記事で紹介するのは、ビデオチャット後に入力してもらう満足度と良い点・改善点の関係を分析した結果です。満足度と良い点・改善点は、以下のようなUIでデータを収集しています。満足度は0から10までの11段階、良い点・改善点は2値のデータです。
選択可能項目
良い点・改善点の具体的な選択項目は以下のとおりです。元々感想レポートで使うことを想定して作成されています。
分析方法
良い点・改善点は、容姿・印象、会話、性格について質問する形になっています。そこで、それぞれに対応する満足度を目的変数とし、良い点・改善点を説明変数とした回帰分析を行うことで、各満足度に関係する良い点・改善点を分析することができます。ただし、容姿・印象の良い点・改善点については、容姿満足度と印象・雰囲気満足度の二つがあるので、同じ良い点・改善点を使ってそれぞれの満足度との関係を調べています。
結果
結果の見方
容姿、印象、会話、性格の順に、結果を見ていきましょう。結果は回帰係数の推定値のグラフで示します。該当項目が選択されたときの満足度の上がり幅下がり幅を示しているものだと考えてください。例えば、Aという項目の係数が1ならば、Aが選択された時に満足度が1上がっていると読み取ります。男女の比較をしやすいように、良い点・改善点ごとに男女の結果を並べたグラフにしています。エラーバーは標準誤差です。
容姿
まず、容姿満足度に関係する良い点・改善点です。
笑顔とおしゃれは大きくプラス
男女とも満足度へのプラスの寄与が非常に大きいのは「笑顔が素敵」と「おしゃれ」で、次いで「肌がきれい」と「歯並びが良い」のプラス寄与も大きいです。笑顔や服装は基本ではありますが、それが確認された形です。
歯並び、肌、眉がよくないとマイナス
マイナス寄与は男女差が大きいのですが、男女ともマイナス寄与が大きいのは「歯並びが悪い」「肌が汚い」「眉が整っていない」です。肌や歯並びはよかったとしてもプラス寄与の幅がそれほど大きくないですが、改善点として指摘された場合は大きなダメージがあります。歯並びはすぐには改善できるようなものではないですが、肌は改善点として指摘されない程度にケアしておくのがよいでしょう。
女性のほうが服装を重視
男女差も目立ちます。服装は女性が気にするようで「おしゃれ」は女性のほうが係数が大きくなっています。興味深いのは女性のみ「服装がフォーマル過ぎる」のマイナスが大きく、「服装がカジュアル過ぎる」のマイナスもあるので、フォーマルとカジュアルのバランスがとれた服装でないと女性からマイナス評価を受ける可能性があるということです。女性のみ「健康そう」のプラスが大きく、笑顔やおしゃれほどではないですが健康アピールも高評価につながると思います。男性は肌や歯並びのように一朝一夕で改善できないところのマイナス評価が大きく、女性は服装や眉のような注意すればすぐに改善できるところのマイナス評価が大きいです。そういう意味では、男性は努力すれば改善効果がすぐに得られやすいと言えそうです。
印象
次は、印象満足度に関係する良い点・改善点です。
印象では笑顔が大きくプラス
男女とも満足度へのプラスの寄与が非常に大きいのは「笑顔が素敵」と「おしゃれ」ですが、容姿満足度と比較すると「おしゃれ」のプラス幅が低下しより「笑顔が素敵」のプラス幅が大きくなっています。印象をよくするためには、笑顔が一番大事ということです。容姿満足度と比較すると「健康そう」のプラス幅も大きくなっており、容姿より印象の高評価につながっていることがわかります。
服装はフォーマルすぎずカジュアルすぎずに
容姿満足度と比較すると、極端なマイナスが少なくなって、マイナス寄与の男女差が縮小しています。印象満足度では、大きくはないものの男性でも「服装がフォーマル過ぎる」はマイナスです。女性もフォーマルとカジュアルのバランスを考慮した服装が悪印象回避につながります。
会話
次は、会話満足度に関係する良い点・改善点です。
テンポや反応をよくし気持ちよく話してもらえればプラス
男女とも満足度へのプラスの寄与が大きいのは「テンポが良い」と「反応が良い」「話が面白い」「聞き上手」です。この4点はよく見ると男女で違いがあることがわかります。女性はテンポと反応、聞き上手の評価が高いことから、気持ちよく話ができる男性を高く評価しているようです。女性と比較して男性は話の面白さの寄与が大きく聞き上手の寄与が小さいので、相互にコミュニケーションをとりながら面白い話ができる女性を高く評価しているようです。細かい違いはありますが、男女とも相手に気持ちよく話をしてもらうようにするのがよさそうです。会話時間は5分間なので話題の豊富さはあまりプラスには働かないようです。
会話が途切れない程度の話題を準備
マイナス寄与は男女差が大きいのですが、男女ともマイナス寄与が大きいのは「話題が少ない」と「反応が薄い」です。5分間の間がもたないほど話題が少ないと会話が途切れて気まずくなりますし、反応が薄いと会話が盛り上がりにくいので納得のいくところです。「言葉がきつい」「話が長い」「話が浅い」「声が小さい」は男性より女性でマイナス幅が大きいものです。会話の改善点ではほとんどが男性より女性のマイナス幅が大きくなっているところが興味深いところです。男性は反応が薄かったり会話が途切れたりしなければ会話への不満はあまりないようですが、女性は会話でも気にしている点が多いのでマイナス評価を受けないように注意が必要です。話の浅さは人によって判断基準が異なりそうなので改善が難しいものの、言葉のきつさや話の長さ、声の大きさは注意すれば改善できるところです。
性格
最後に、性格満足度に関係する良い点・改善点です。
さわやか、ポジティブがプラス
男女とも満足度へのプラスの寄与が大きいのは「さわやか」と「ポジティブ」です。「さわやか」は特に女性のプラス幅が大きいものの、おそらく性格というより印象を指しているのではと思います。「ポジティブ」はプラス幅が大きいのは納得感がありますが、それと比較して「誠実」は意外とプラス幅が小さくなっています。ただし、「誠実」や「知的」は女性のプラス寄与が大きめなので、男性は誠実さや知的さを感じてもらえるようにするのは有効です。他にも、「仕事熱心」「謙虚」はあまり高く評価されないようです。謙虚に振る舞うより、ポジティブさを感じてもらえるように積極的な姿勢を見せた方が高評価につながりそうです。
暗い、偉そう、ガサツはマイナス
男女ともマイナス寄与が比較的大きいのは「暗い」「偉そう」「ガサツ」です。「暗い」「偉そう」は性格というより印象を指しているのではと思います。「ガサツ」と思われない程度に丁寧な振る舞いが必要でしょう。「冷たい」「軽薄」もマイナス幅が大きめです。ビデオチャットではオフラインでの対面と比較して暗い印象や冷たい印象を受けやすいので、普段より明るめかつ積極的に振る舞うのがよいと思います。
ネガティブ、落ち着きのなさは女性から不評
男女差が大きいところを見ると「ネガティブ」「落ち着きがない」は女性のマイナス幅が大きいことがわかります。落ち着きのなさやネガティブ思考は頼りなさを感じさせるので、女性から不評なのかもしれません。
まとめ
今回はどのような良い点・改善点を指摘されたときに満足度が高いあるいは低いかを調べることで、異性から評価させるためにはどのようにすればよいかについて考えました。細かいことをいうと今回の分析は因果推論ではないので、あくまでもこのような特徴があると満足度に違いがあったということを示したものですが、大きくは外していないのではと思います。性別ごとにまとめると以下のようになります。
knewでモテる方法
男女共通
- 笑顔を心がける
- 服装には気を配る
- おしゃれさを感じてもらえればベスト
- フォーマルとカジュアルのバランスをとる
- 余力があれば、肌や眉を整える
- 会話はテンポよく反応も大きめにして相手に気持ちよく話してもらうよう心がける
- 会話が途切れない程度の話題は用意しておく
- さわやかさやポジティブさを感じてもらえるように積極的に振る舞う
- ガサツさや軽薄さを感じさせるような振る舞いをしない
女性
- 肌ケア
- 男性も楽しめる話題があるとよい
男性
- できればおしゃれに
- 自分が話すより女性に気分よく話してもらう
- 話したいことがあっても長々と話をしない
- 落ち着いて、誠実さ、知的さを感じてもらえるように振る舞う
- 大きな声で話せ!きつい言葉を使うな!
当たり前にも思うかもしれませんが、しっかり実践することが大事です。自分がやっているつもりでも、相手からはそう思われていないことがあるのでknewの感想レポートのような機能を使って確認する必要があります。
次回は、別のデータを使って、どういう人が相手から高く評価されるかを調べた結果を紹介します。