リブセンス インフラエンジニアの@sheep_san_whiteです。お酒とロードバイクとランニングが好きなおじさんです。
2025年1月26日(日)、中野セントラルパーク カンファレンスで『SRE Kaigi 2025』が開催されました。
本記事では、リブセンス インフラGのメンバーが現地で得た知見をもとに、カンファレンスの模様をお届けします。
- SRE Kaigiとは?
- 印象に残ったセッション
- おわりに
- 参考
SRE Kaigiとは?
SRE Kaigiは、SREに関する技術知見の共有と交流を目的としたカンファレンスです。今年のテーマは「More SRE !」。以下、公式サイトより引用します。
More SRE ! さらにSREを広めよう!
SRE Kaigi 2025は、「More SRE !」をテーマに開催される、SREを中心として知見の共有と参加者との交流を楽しむ技術カンファレンスです。
SREは世界的に注目され続けている領域であり、現場によって抱える課題や取り組みはそれぞれ異なります。 そうした多様な事例から得られた知見を共有する場は、まだまだ不足している現状です。
「さらにSREに関わる技術者の活躍の場を増やすため」 「さらにSREを理解し、興味を持っていただける技術者を増やすため」
この2つの“More”を目指し、参加者の皆様とコミュニティをより盛り上げていけたらと思います。
印象に残ったセッション
以下は、各メンバーが印象に残ったセッションの内容のレポートです。
@etsxxxの印象に残ったセッション
もっとSREの裾野を広げるための初学者向け技術研修設計
スピーカー: GMOペパボ株式会社 染矢 健人さん (@kesompochy)
ちょうど昨年末頃に私がリブセンス社内で新卒研修を議論していたこともあり、GMOペパボ株式会社の染矢さんの発表が印象に残りました。「SREは生き様だろ!!」という冒頭の言葉から幕を開け、ところどころにキャッチーな言葉を散りばめる、発表の上手さも印象的でした。
発表内容のメインストーリーはタイトルの通りで、新卒研修についての考え方や、実際にやったこと、その狙いの紹介です。
しかし、研修によって新卒という個人を育成するだけに留まらず、組織に対しても技術や文化を浸透させることを狙っていたのが一石二鳥の良いアイディアで、なるほどなぁと感銘を受けました。初学者に『刷り込み』をして所属組織への『トロイの木馬』になってもらう、覚えました。(送った先の組織を陥落させちゃ困るんですが)
リブセンスにおいても、専門性の高いエンジニアは『技術部』として全社横断部署に編成されており、プロダクト開発の事業部と分離しています。専門的な知識や技術を知ってもらうことは大事ですが、その前提となる『考え方』を浸透させる手法として研修という手段があるのか、と、とても参考になった発表でした。
ところで、『「SREは生き様だろ!!」という冒頭の言葉』なんて書いてますが、スライドをあらためて読むと、登場位置は27/80ページなんですね。ぜんぜん冒頭じゃなかった。私も考え方を刷り込まれてますね。
@sheep_san_whiteの印象に残ったセッション
実践: Database Reliability Engineering ~ クラウド時代のデータベースエンジニアの役割 ~
スピーカー: KINTO テクノロジーズ株式会社 粟田 啓介さん (@_awache)
複数のツールを使ってDBの信頼性を高めているという内容で印象的でした。それぞれのツールは、KINTOと筋斗雲(きんとうん)の関係のように、西遊記やドラゴンボールと掛けたネーミングだそうです。
「複数のツール(ドラゴンボール)を集めて願いを叶える(幸せになる)」というような思いも込められているのだそうです。
ツールの中からいくつかピックアップしてお話されていたのですが、特に印象に残ったのが「DB Catalog(Shenron)」と「AI Schema Review」でした。
「DB Catalog(Shenron)」は「データベースの現在の状態を正しく認識する」ことが狙いで、information_schemaから情報を取得して可視化するツールです。SchemaSpyと他の要素を組み合わせて可視化を行っているのですが、SchemaSpy単体では足りていない部分を補っていたのが印象的でした。
「AI Schema Review」はAIによるスキーマレビューを行うツールです。粟田さんもおっしゃるとおり、「DBのスキーマは1度生成されると後戻りしづらい」ため、スキーマを作る前にレビューして貰えるのは嬉しいです。
SIEMによるセキュリティログの可視化と分析を通じた信頼性向上プロセスと実践
スピーカー: 株式会社ココナラ 川崎 雄太さん (@yuta_k0911)
ココナラさんでは「インフラ・SREチーム」「CSIRTチーム」「CITチーム」複数のチームで分業してセキュリティの対応を行っており、セキュリティ専門組織が不在だったそうです。セキュリティログの可視化と分析を通じて各部署シナジーが生まれてうまく連携がとりやすくなったのはメリットに感じました。
リブセンスでも「セキュリティチーム」「情シスグループ」「法務グループ」など複数部署で連携しながらセキュリティの対応を行っています。他社事例を見てもSRE組織と情シス(コーポレートIT)のつながりは強いので、セキュリティに携わる上では自然なことなのでしょう。
SIEM on Amazon OpenSearch Serviceを使用したセキュリティログ分析も興味深いポイントでした。特に、WAFのログが150GB/日と膨大であり、この規模のデータを効率的に分析するためには、OpenSearch Serviceの活用が有効だと感じました。
通常運用で、毎営業日17時に定点確認してその後のアクションを決めてチケット化していることなど、セキュリティに対して注力している様子が伺えました。それにより、セキュリティインシデントの予兆検知と発生後の分析高速化が実現できたのだそうです。
SIEM on Amazon OpenSearch Serviceについてはかなりコストがかかりますが、関連部署間でのシナジーを生み出すきっかけになり、セキュリティインシデントの即応性を高めた良い事例だと感じました。
@mom0tomoの印象に残ったセッション
あなたの興味は信頼性?それとも生産性? SREとしてのキャリアに悩むみなさまに伝えたい選択肢
スピーカー: PagerDuty株式会社 草間 一人さん (@jacopen)
こちらは大人気のセッションで、立ち見も出て満席でした。流石のjacopenさん、とてもお話が上手で、発表のあちこちで会場が沸いていました。
中でもPlatform EngineeringとSREの共通する点・違う点についての説明と、「信頼性」と「生産性」の矢印の方向を元に自分の興味関心の方向も意識しておくとよい、というのが非常に参考になりました。
発表では、Platform Engineeringというと「共通基盤を作る」というイメージをしてしまいがちだが、そうではなく、開発者にとってのデプロイまでの認知負荷が高すぎる状態を解消するための「その道のプロ」を体系立てて作っていく取り組みである、と説明されており、その説明がしっくりきました。
「マイクラの装置作りが好き」「ゲームでみんなの底上げをするのが好きなタイプ」の人はPlatform Engineeringの指向性があるというのも、なるほどと納得いく説明でした。
そしてこの領域はAI Agentによる大きな影響を受けるだろう(他の領域も全て受けるけれども)、この春頃にはもう大きなインパクトが出始めるはずというのも刺激になりました。今のうちにまず自分の手で試して、体感・理解しておくのを強くお勧めするとのことだったので、自分も触って見ようと思いました。
かたいなかの印象に残ったセッション
2,500万ユーザーを支えるSREチームの6年間のスクラムのカイゼン
スピーカー: 株式会社MIXI HonMarkHuntさん (@honmarkhunt)
わたしはコアスタッフとしてルームBでセッションを見ていたのですが、記憶に残ったのはみてねのSREチームでスクラムをSRE業務にどう適応させているかについてのセッションでした。
SREチームでスクラムを採用するうえで、差し込みの多さ、わんぱくバックログ、中長期目標が描きづらいという課題感にどう対応していったか発表されていました。
標準的なスクラムのプラクティスをもとに不要なプロセスをうまく捨てていきながら、SREチームでうまく回せる方法を探しているのが印象的でした。教科書に書かれていることだと、思い切ってスクラムをやめることも考慮ポイントなのですが、スクラムをやめずにうまくより良い方法に向かっていっています。
リブセンス インフラGでも、属人化を防いでチケット管理をスクラム的にしていくことについては課題感があるのですが、すぐにでも参考にしたい発表でした。
あとでAsk the speakerにも行ってさらに聞いてみたのですが、タスクを属人化させないために、チーム全体でかなり意識を高く持って取り組んでいる印象でした。ドキュメントの読み込みなどもチームで一緒に行う場を設けたりして、知識が偏ってしまうのを防ぐことを意識して業務に取り組まれているとのことでした。
おわりに
カンファレンスを通じて、SREの最新トレンドや具体的な取り組み事例を学ぶことができ、とても有意義な時間となりました。会場はとても盛り上がり、350名と多くの方が参加されていました。
休憩スペースには屋台(たこ焼き、おでん、クレープ)や指圧があり、会場のアナウンスはみんながよく知る声優さんという演出もあり、とても面白い取り組みをされていました。
私たちリブセンス インフラGのメンバーも、それぞれのセッションを通じて多くの学びを得ることができました。各セッションを通じて得た学びを、今後の業務に活かしていきたいです。
余談ですが、カンファレンス会場でたまたま少し前に転職したアルムナイの人を見つけて話が弾み、閉会後に野良で懇親会をしたのも楽しかったです。